
シーズ紹介
N固溶による高Crステンレス鋼を磁気シールドに用いたNiレス歯科用磁性アタッチメントの開発
日本で生まれ、日本の最先端技術で進化した閉磁路型の歯科用磁性アタッチメントは、義歯をはじめインプラントの上部構造やエピテーゼなどの固定にも利用されており、国際的な地位を得るに至っている。閉磁路型は、超小型で維持力が高く、磁場の漏洩が少ない特徴を示すが、磁気回路を形成するために磁性ステンレス鋼とNiを含む非磁性ステンレス鋼をクラッド加工で高精度に組み合わせる必要がある。国産のカップヨーク型では、構成材料全体に対するNi含有量は0.3%未満であるが、磁性アタッチメントの国際規格ISO 13017において、0.1%以上のNiを含む場合にはNi含有の申告が義務付けられている。安全性重視の国内外事情を考慮すると、Niを全く含まない閉磁路型の歯科用磁性アタッチメントの開発が切望されているが、国内外を通して未だ開発には至っていない。
我々の開発したN固溶による歯科用磁性アタッチメントの製造方法は、高Cr磁性ステンレス鋼にNを周囲から固溶させて表面のみを非磁性化し、クラッド加工なしに磁気回路を形成できる利点を持つ。同一の磁性ステンレス鋼のみで構成できるため、耐食性に優れ、製造工程の低減化とNiを全く含まない閉磁路型の歯科用磁性アタッチメントの製造が期待できる。

開発責任者
東北大学大学院歯学研究科
高田 雄京 准教授
【研究概要】
対象:欠損歯
本研究では、SUS XM27 フェライト系ステンレス鋼にNを固溶させて非磁性化した磁気シールド材料に着目し、Niを全く含まない閉路型の歯科用磁性アタッチメントの開発を目指す。我々の開発したN固溶による磁気シールド機構は、歯科用磁性アタッチメントに用いられている磁性ステンレス鋼にNを周囲から固溶させて表面のみを非磁性化したものであり、最終工程のレーザー溶接で精度よく調整できる。N固溶で得られるγ相は、非磁性を示すだけでなく、十分な引張強さ(918±15 MPa)と伸び(17~18%)を持ち、1.1V(vs. NHE)を上回る孔食電位を示す。現在、N固溶相の生成速度を固溶温度と加熱時間により制御し、Niを全く含まない歯科用磁性アタッチメントの試作に成功しており、現行品と同等の維持力を得ている。
【研究の実施計画】
【企業連携の状況・希望する企業連携の内容】
NEOMAXエンジニアリング㈱を連携企業とし、共同研究中である。
【共同研究者】
高橋 正敏 助教(東北大学大学院歯学研究科・歯科生体材料学分野)
清水 良央 助教(東北大学大学院歯学研究科・口腔病理学分野)
佐々木 啓一 教授(東北大学大学院歯学研究科・口腔システム補綴学分野)
【お問い合わせ】
お問い合わせは「開発推進部門」までお願いいたします。
開発推進部門 : 【E-mail】 review*crieto.hosp.tohoku.ac.jp (*を@に変更してください)