東北大学病院臨床研究推進センター

Clinical Research, Innovation and Education Center, Tohoku University Hospital

東北大学病院臨床研究推進センターは、医学系の研究開発をサポートするとともに、基礎研究の成果を臨床の場に実用化する橋渡しをいたします。

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HDAC/PI3K 2重阻害作用を有する新規デプシペプチド類縁体の開発

 がんは日本人の死因の3割を占め、年間35万人が死亡している。進行がん患者に対する薬物療法の効果は不十分で、治療効果が高く新規の作用機序をもつ治療薬の開発が必要とされている。
histone deacetylase (HDAC)阻害剤およびphosphatidylinositol 3-kinase (PI3K)阻害剤は、有望ながん分子標的薬剤であるが、これまでの報告では、それぞれの阻害剤の単剤使用での効果は限局的である。しかしながら、この2剤の併用は、殺細胞効果の相乗作用をもたらすことが報告され、HDAC /PI3K をともに阻害する薬剤の開発は、難治性がんの克服に多大な貢献をするものと考えられる(図1)。われわれは、HDAC/PI3K dual inhibitorのシーズとして、ロミデプシンおよびその類縁体を同定した。医薬品としての市販化を最終目標に、化合物の最適化およびマウスでの抗腫瘍効果の評価に取り組んでいる。

石岡 千加史 教授

開発責任者

東北大学加齢医学研究所
臨床腫瘍学分野

石岡 千加史 教授

  • 図1
    図1

【研究概要】

対象:悪性腫瘍

 われわれは、酵母を利用したPI3K阻害剤のスクリーニングシステムを用いて、文部科学省化学療法支援班の寄託化合物ライブラリーから、HDAC阻害剤であるロミデプシン(FK228) およびその新規類縁体にPI3K阻害活性があることを見いだした。つまりHDAC/PI3K dual inhibitorのシーズを同定した。
 キナーゼ阻害剤の多くは、ATP競合性の阻害剤であるため、複数のキナーゼに対する阻害活性を有することがある。2種のキナーゼを阻害するという意味でのdual inhibitorは多く存在するが、本研究のFK228類縁体は、HDACとPI3Kという異種の2分子を標的としたdual inhibitorであり独創的である。HDAC阻害活性は、HDACの活性中心にあるZnをキレートすることで発揮されるが、PI3K阻害活性はATP競合的に発揮されることをわれわれが示しており(図2)、作用メカニズムの観点からも非常に興味深い。また、PI3K阻害活性の強いFK228類縁体は、FK228よりも強い殺細胞効果を発揮し、その殺細胞効果はHDAC阻害剤に抵抗性の細胞においても確認された。(図3 )、構造活性相関の解析から、これまでに活性の強い類縁体の同定に成功しており、その類縁体を用いて、マウスでの抗腫瘍効果の評価に取り組んでいる。

  • 図2
    図2
  • 図3
    図3:殺細胞効果の評価

【論文】

Romidepsin (FK228) and its analogs directly inhibit PI3K activity and potently induce apoptosis as HDAC/PI3K dual inhibitors. K. Saijo, T. Katoh, H. Shimodaira, A. Oda, O. Takahashi, C. Ishioka. Cancer Science 2012; 103: 1994-2001

【研究の実施計画】

研究の実施計画

【企業連携の状況・希望する企業連携の内容】

現在のところ企業と連携なし。
GMPグレードの製剤および、GLP試験の実施にあたり、企業連携を希望している。

【共同研究者】

西條 憲 助教(東北大学加齢医学研究所 臨床腫瘍学分野)

李 仁(東北大学加齢医学研究所 臨床腫瘍学分野 大学院生)

加藤 正 教授(東北薬科大学 医薬合成化学教室)

【お問い合わせ】

お問い合わせは「開発推進部門」までお願いいたします。

開発推進部門 : 【E-mail】 review*crieto.hosp.tohoku.ac.jp  (*を@に変更してください)

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