東北大学病院臨床研究推進センター

Clinical Research, Innovation and Education Center, Tohoku University Hospital

東北大学病院臨床研究推進センターは、医学系の研究開発をサポートするとともに、基礎研究の成果を臨床の場に実用化する橋渡しをいたします。

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サラヤ株式会社 吉田 葉子先生講演会「手指衛生市場トップシェア獲得までの道のり ~パンデミックの経験も含めて~」を開催しました

3月27日(水)18:00-19:00、今年度第11回目の未来型医療創造卓越大学院プログラムFM DTS融合セミナー(共催:臨床研究推進センターバイオデザイン部門・医工連携イノベーション推進事業)サラヤ株式会社 常務取締役兼メディカル事業本部本部長・学術部部長 吉田 葉子先生の講演会をオンラインにて開催いたしました。
 
今回のご講演では、サラヤ株式会社のメディカル事業の中で、手指衛生事業を中心に医療分野でのシェア獲得までの経緯、パンデミック下でのご経験をご教示いただきました。
 
サラヤ株式会社のメディカル事業は、時代のニーズを捉えたサービスを開発、販売することでユーザーの支持を得て事業を拡大されてきました。例えば、手指消毒の第一選択が「流水+石鹸」から「アルコール消毒」になった2000年以降には、頻回の手指消毒に適した使用感や手荒れに配慮した商品、液体タイプよりも床に液がこぼれにくいジェルタイプの商品を販売します。また、通常のアルコール消毒では効果が期待できないノロウイルスが流行した際には、ノロウイルスなどノンエンベロープウイルス対応の消毒剤を開発し、感染症拡大防止のニーズに対応しました。コロナ禍では、自動噴出型の消毒液の商品や玄関に設置するタイプの商品を販売し、手指消毒の遵守率向上に寄与しました。メディカル事業の開始当時は、社名や商品名がまだ浸透しておらず、病院での営業等にも苦労したそうですが、このような地道な取り組みを経て着実に売り上げを伸ばし、現在、メディカル事業は、全社の約45%の売り上げを占める事業に成長し、特に感染対策事業は高いシェアをキープされています。このような成長の背景には、顧客ニーズを捉え、特定の商品販売に留まらず最適解を顧客とともに考える「ソリューション営業」で顧客との信頼構築や、企業価値・ブランド確立を実現されたという経緯があり、ブランディングとマーケティングの相乗効果を生みだすことの意義をご教示いただきました。
 
さらに、COVID-19パンデミック下でのご経験からは、サプライチェーンマネジメントの重要性をお話いただきました。商品製造において、生産は、「原料の調達→製造→流通→販売→ユーザー」という流れで行われますが、商品のニーズに関する情報はその逆の流れで伝わります。そのため生産から販売まで、一定時間のギャップが生じます。パンデミック時は、急激な需要増に容器や原材料が不足し生産が追いつかない状況もあった一方、需要が落ち着き始めると、生産を急に止めることはできず、供給過多になってしまう状況もあったそうです。これらの課題に対応するためには、需要と供給のギャップ短縮や、流行後の需要の落ち幅を緩和するための出口戦略が重要であり、サプライチェーン全体で、情報共有ができるような管理体制や、各セクションでのリスクヘッジ等の危機管理が重要であることをご教示いただきました。
 
現場のニーズを反映した商品作りからサプライチェーンマネジメントまで、商品を通して社会へのインパクトを生み出すために必要な考え方や視座について、多角的に学ばせていただいたご講演でした。
 
本講演会は、卓越大学院プログラムに参加する学生の他、企業の方を含む幅広い領域から学内外251名の方々にご参加いただきました。
吉田先生、ご講演ありがとうございました。
 
20240327
 
文責:東北大学医学系研究科 修士1年 内田彩希

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