東北大学病院臨床研究推進センター

Clinical Research, Innovation and Education Center, Tohoku University Hospital

東北大学病院臨床研究推進センターは、医学系の研究開発をサポートするとともに、基礎研究の成果を臨床の場に実用化する橋渡しをいたします。

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エモリー大学 中嶋優子先生講演会「新型コロナが猛威を振るい続ける米国での救急医療~プレホスピタル医療の現場から~」を開催しました

8月5日(水)18:00-19:00、今年度第6回目の未来型医療創造卓越大学院プログラム(共催:臨床研究推進センターバイオデザイン部門)FM DTS融合セミナー エモリー大学 中嶋優子先生の講演会をオンラインにて開催しました。

 
中嶋先生は、日本で麻酔科、救急総合診療を経験後、救急医療の魅力に気づき、米国でのトレーニングを望み、卒後7年目にECFMGを取得されるのと同時に、イェール大学救急レジデントとして勤務する傍ら、国境なき医師団に参加されてきました。米国救急医療の現場や世界の紛争現場で医療行為を行い、現在は国境なき医師団日本副会長も兼務されています。
今回の講演では、アメリカの新型コロナウイルス対策や救急医療現場での医療従事者の声、新型コロナウイルスに感染した患者さんの様子や、世界中の医療現場を見てこられた中嶋先生の視点から見えるポストコロナ後の世界観について、また、日本と米国の医療の違いや中嶋先生がいかに世の中の課題に向き合って来られたか、新型コロナウイルス世界最多の感染者を出している米国の救急医療現場の生の声をお聞かせいただきました。
ジョージア州の現状は、マスクに断固反対派の人々がいるということや、密な状態がいまだにあることが現状でやはり政治的な背景もあり収束はまだまだということでした。病院ERでの新型コロナ対応については、CDCに隣接しているエモリー大学の本院では、2014年に全米で初めてエボラ患者を受け入れた経験を活かし、武漢でコロナの話が出始めた際に、いち早く仮設テントや物資の準備を開始されたそうです。
一番のコロナ最前線としてEMS(プレホスピタル:Emergency Medical Services)のMetro Atlanta Ambulance Serviceについてご紹介いただき、コロナ後の変化としては、ERはいつにも増して患者さんが多いことが問題となっており、待ち時間などの短縮や、救急車のたらい回し防止のため細かい状況までわかるようにデータ収集の強化が重要視されるようになったそうです。救急員が地域のニーズに沿った医療に携わることが特にコロナ時代では有効であり、地元密着で地元特有の医療のギャップを特有の評価を通してプレホスピタルシステムとパラメディックが埋めていくとお話しされていました。日々変化していく状況に、学ぶことも多く、色々工夫されながら取り組まれおり、今後は遠隔医療やCommunity Paramedicineがどんどん広がっていくのではともお話しされていました。

 

ご講演の最後には、アメリカの状況を踏まえて日本から発信できるものとして、クリエイティブなアイディア、きめ細やかさ、隙間産業を見つけていくこと、IT技術、適応能力、柔軟性などがあるということをお話しいただき、“Think out of the box”型にはまらない斬新な発想がいつもより受け入れられる状況にあり、実際に、日本で作られたモバイルストロークユニットに注目し、プレホスピタル分野で広げたいとお話しされていました。

講演後の質疑応答の中で、学生からの「アメリカ社会に溶け込んで活躍されているがどうやってアイデンティティを切り替えているのか、日本人らしさをどう強みにしているのか」という質問には、「アイデンティティは日本人で根は変わらない。仕事の時は頑張ってアメリカ人っぽくする。日本の情報を提供して、リエゾン的な役割でいるときが嬉しい。」と海外での働き方についてのメッセージとともにご講演の最後には「ゆとりを大事にしながら、判断基準が変わるなかで柔軟性とバランスを意識していくことが医療にとって大事です」という熱いメッセージをいただき、日々状況が変化する中で、病院全体の利益損失のために人員削減などもあり、医療従事者は疲弊してきている状況ですが、めげずに柔軟に変化に対応していきたいという中嶋先生のお人柄に触れ、ご講演後にオンラインにも関わらず活発な質疑応答・意見交換が行われました。本講演会は、卓越大学院プログラムに参加する学生の他、学内外から企業の方を含む幅広い研究領域の352名の方々にご参加頂きました。中嶋先生、ご講演ありがとうございました。

 

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中嶋優子先生

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