
活動報告
国境なき医師団日本 会長 中嶋 優子先生講演会「国境なき医師団の最前線:人道危機の現場から」を開催しました
3月18日(水)18:00-19:00、今年度第9回目の未来型医療創造卓越大学院プログラムFM DTS融合セミナー(共催:臨床研究推進センターバイオデザイン部門)国境なき医師団日本 会長/エモリー大学医学部 救急部 Associate Professor/メトロアトランタ救急搬送サービス Medical Director 中嶋 優子先生の講演会をハイブリッド形式にて開催いたしました。
今回の講演では、国境なき医師団(MSF)による医療援助活動の現状についてお話いただきました。MSFの活動は、資金の98%を民間からの寄附で賄うことで、政治や軍事に左右されない独立性を保っています。「中立」「公平」「独立」を活動原則とし、銃を持たない団体として、紛争地においても、MSFのマークそのものが身を守る盾となっているとお話しされました。
シリアでは、対立する双方の負傷者を同じ病院内で治療するなど、まさに中立・公平が守られて医療提供が行われていることが紹介されました。さらに、資材が足りない場所においては、MSFのロジスティクス体制が重要な役割を果たしており、その機動力の高さが特徴であることを説明されました。
現在も世界各地の紛争地では深刻な状況が続いています。特に印象に残り、影響を受けているのがガザ地区であると述べられました。医療施設への攻撃により、医療従事者自身が常に命の危険に晒されている実情が明かされました。現地では「WCNSF(負傷した子供、生き残った家族なし)」という単語が存在するほど悲劇が日常化しており、一度に数十名が運び込まれるマス・カジュアルティへの対応が常態化していたそうです。そうした状況下でも、現地の医師たちは、自身も家族を亡くしたり、物資が枯渇したりする中で、自らの食事を周囲に分け与えようとするなど、極限状況の中にあってもなお強い使命感と人間的な温かさを持ち続けているとお話しされました。
また、ガザでの活動は、経験豊富なスタッフであっても心身に大きな負担がかかる環境であったそうです。そんな中、子供たちとの触れ合いが癒しの時間であり、日本の子供たちと変わらぬ無邪気な姿を動画で紹介いただき、中嶋先生の「いつも無事でいてほしいと願っている」という言葉がとても印象的でした。
一方で、MSFでは紛争地の現地医師へのトレーニングも実施しており、限られた設備環境においても医療技術の向上が図られていることが説明されました。また、「心のケア」の重要性についてもお話しされ、国内においても災害時には被災者と支援者双方の心理的支援を目的とした活動が行われていることが紹介されました。
日本の支援の在り方については、独自のポテンシャルがあると言及され、東日本大震災の際、単なる衛生管理としてのシャワー提供にとどまらず、温かいお風呂や嗜好品といった細やかな配慮が人々の心を救ったように「相手に寄り添う支援」は国際社会でも大きな価値を持つとお話しされました。
今回の講演では、資料や報道だけでは得られない大変貴重なお話しを聞くことができました。普段当たり前のように過ごしている日常が決して当然のものではないことを改めて認識する機会となりました。
本公演は、卓越大学院プログラムに参加する学生の他、企業の方を含む幅広い領域から学内外418名の方にご参加いただきました。
中嶋先生、ご講演いただきありがとうございました。


