東北大学病院臨床研究推進センター

Clinical Research, Innovation and Education Center, Tohoku University Hospital

東北大学病院臨床研究推進センターは、医学系の研究開発をサポートするとともに、基礎研究の成果を臨床の場に実用化する橋渡しをいたします。

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株式会社トラストバンク 大井 潤先生講演会「医療、地方創生、安全保障 〜時代の転換点におけるビジネスのあり方の一考察〜 」を開催しました

11月12日(水)18:00-19:00、今年度6回目の未来型医療創造卓越大学院プログラムFM DTS融合セミナー(共催:臨床研究推進センターバイオデザイン部門)株式会社トラストバンク 代表取締役社長兼CEO大井 潤先生の講演会をオンラインにて開催しました。
今回の講演では、時代の転換期における医療・地方創生領域のビジネスの在り方について、官民双方でご活躍されてきた大井先生にお話しいただきました。多様なキャリアを通じて培われたご経験を踏まえ、変化の激しい現代のビジネス環境において大井先生が“変えずに大切にしてきたこと”と“状況に応じて柔軟に変えてきたこと”という、不易流行の視点からご講演いただきました。
 
大井先生は、自治省から医療機関での実務経験を経て、ヘルスケア事業に挑戦する民間企業(DeNA)へと活躍の場を広げられました。さらに現在も、複数の医療関連ベンチャーや地域医療の現場に継続的に携わり続けてこられました。自治省時代には、当時の国策であった地方創生の責任者として、政策決定によって社会が動いていくプロセスを間近で体感されました。また、民間企業ではCFOも務められ、ヘルスケア事業をはじめとする領域で、ITを活用した価値創出に取り組んでこられました。
 
そんな多様なキャリアの中で、大井先生が“変えずに大切にしてきたこと”として、3つの信念をご紹介いただきました。1つ目は「リーダーとしての価値」です。リーダーを務める際には、プロジェクトメンバーに対して有益な示唆や具体的なアドバイスを提供し、チームに価値をもたらせるかどうかを、自らの判断基準として大切にされているとのことでした。
 
2つ目は「仕事への向き合い方」です。組織に属していると、どうしても立場の上の人に向かって仕事をしてしまいがちですが、大井先生は常に「人ではなく事に向かう姿勢」を大切にしてこられたといいます。官民それぞれの現場でのエピソードを交えながら、「誰が言ったか」ではなく「何を言ったか」に重きを置き、目の前の事象に対してグリットかつ全力で取り組んでこられたことをお話しいただきました。
 
3つ目は「仲間づくり」です。公務員時代、ザガット・サーベイ長野版の作成に尽力されていた際、香港で偶然ザガット夫妻に出会ったという印象的なエピソードをご紹介いただきました。業務への強い情熱が思わぬ良縁を引き寄せた実体験として語られました。大井先生は「思いは磁石である」という言葉を示され、目の前の仕事に強い思いを持つことの重要性、そしてこれまで出会ってきた人とのご縁を丁寧に紡ぐことの大切さを強調されました。
 
その一方で、大井先生は、変化の激しい現代において“状況に応じて柔軟に変えてきたこと”として、世界情勢の変化に合わせて自身の立ち位置をマクロに捉える姿勢、官と民の関係性の捉え方、そして 事業のつくり方 を挙げられました。特に事業づくりについては、失敗を恐れず、トライアンドエラーを徹底的に繰り返すことの重要性を伝えていただきました。
 
質疑応答の時間では、参加者から「失敗を恐れないマインドセットはどのように身につければよいか?」という質問が挙がった際、大井先生は「目の前のことに全力を尽くす姿勢の大切さ」をお話しいただきました。
「ビジネスとして明確な撤退ラインを設定し、それを超えない限りは全力を出し切る──その結果としての失敗であれば、消化不良を起こさず前向きに受け止められる」と参加者に力強いメッセージを送られました。
 
講演全体を通じて、大井先生は常に「変わらない軸」と「柔軟に変える姿勢」を両立させながら、目の前の事に全力で向き合う生き方の重要性を強調されていました。それは単に官民双方でのキャリアや事業づくりの姿勢にとどまらず、社会的変化が著しい現代においても、揺るがない信念を持ちながら柔軟に挑戦を続けるために必要なマインドセットであると感じられます。まさにこの生き方こそが、官民双方での豊富な経験を通じて得られた、現代のビジネスやキャリアにおける本質である、というメッセージを私たちに伝えていただいたように思います。
 
本講演会は、卓越大学院プログラムに参加する学生の他、企業の方を含む幅広い領域から学内外310名の方々にご参加いただきました。
大井先生、ご講演いただきありがとうございました。
 

 
文責:教育学研究科 博士課程前期 2年 三浦 直己

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