
活動報告
株式会社ユーグレナ 共同創業者 兼 エグゼクティブフェロー 鈴木 健吾先生講演会「サイエンスを社会へ―研究者の越境力とキャリア形成 」を開催しました
10月8日(水)18:00-19:00、今年度5回目の未来型医療創造卓越大学院プログラムFM DTS融合セミナー(共催:東北大学病院臨床研究推進センターバイオデザイン部門)株式会社ユーグレナ 共同創業者 兼 エグゼクティブフェロー 鈴木 健吾先生の講演会をオンラインにて開催いたしました。 
 
今回の講演では、ユーグレナ(ミドリムシ)の生態と利活用、事業の創業から上場、そして現在の取り組みについて、ご自身の研究・事業経験を通じて、サイエンスを社会へとつなげるための考え方や実践についてお話しいただきました。
 
講演ではまず、ユーグレナの生態、研究内容、事業の立ち上げから上場に至るまでの過程が紹介されました。植物と動物両方の栄養素を併せ持ち、免疫にも良い影響を与えるミドリムシの可能性を信じ、周囲の理解を得ながら製品化を進めた経緯や、機能性表示食品「からだにユーグレナ」開発の裏側など、挑戦の連続であった創業期のエピソードが語られました。発見から特許申請までをわずか1週間で実現するベンチャー企業のスピード感や、小さなコストで仮説検証を繰り返し、大規模化に応用した事例が示されました。また、事業を行いながら、農学、医学の博士号を取得され、双方の視点から科学的根拠に基づく課題解決を行えるという強みについて述べられました。
 
続いて、「研究者の越境力」について、研究とビジネスを両立させる視点からお話をいただきました。鈴木先生は「研究者としてビジネスを行う」という立場を貫き、科学的思考で課題を整理し意思決定する重要性を強調されました。問題をロジックツリーで可視化し、原因を「なぜ」を繰り返して掘り下げる手法を紹介され、実際に「ミドリムシが売れない」「上場できない」といった課題をどのように論理的に分解して解決したかを具体的に示されました。たとえば、「ミドリムシが売れない理由」を段階的に分析し、日本科学未来館での展示などを通じて社会認知を高めていった事例が紹介されました。さらに、上場に必要な条件を洗い出し、ガバナンス体制の構築や売上基盤の強化に取り組むなど、課題を一つずつ論理的に解決していった実践過程が示されました。
 
さらに、海外展開や国際的連携に関する実例も紹介されました。マレーシアでの製品販売、JICAとの協働によるゲノム編集技術の現地化、イスラム圏市場への進出など、地域特性を踏まえたアプローチの工夫が示されました。加えて、宇宙での食料生産研究や味覚デバイスの開発など、未来社会を見据えた新たな挑戦にも取り組まれていることが紹介され、サイエンスの可能性を示されました。
 
先生のご経験やお言葉は、研究者として、また社会人としてのキャリア形成を考える上で、大きな示唆を与えるものでした。
 
本講演会は、卓越大学院プログラムに参加する学生の他、企業の方を含む幅広い領域から学内外361名の方々にご参加いただきました。
鈴木先生、ご講演いただきありがとうございました。
 

 
文責:歯学研究科 博士課程4年 小出 理絵

 
            
         
                                        